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中部大学教授 CUBE特別顧問
深谷圭助先生
人が言葉を身につけるとき、それまでの言語に関わる経験によって理解するプロセスを踏んでいく。
例えば食べると言う経験の上に「食べる」という言葉が乗っかっていく。
そのような言語に関わる経験と、その経験を記号化した「食べる」と言う言葉が結びつくことで、正確な言葉の理解が成り立つ。
そのことによって、「食卓」「食堂」という類語の理解の「足場掛け」ができるようになる。
「食卓」は「食べるための卓」であり、食べるための「机、テーブルのこと」である。
「食堂」は「食べるために大人数が集まる建物」のことである。
こうして、理解する言葉は増えていく。
ところが、「食卓」の「卓」の意味がわからない者、あるいは、「食堂」の「堂」の意味がわからない者は、言葉の理解の手がかりを「経験」に依存しなければならないことになる。
ところが、人が経験すること以上に、私たちの生活においては、言葉の理解と活用が必要になるのである。
つまり、経験がなくとも、言葉で大体の意味を想像しても大きくは外さないようにすることが重要なのである。
ある程度、言葉の理解を外さないことを「記号接地」がよいと言い、言葉の理解を外しがちになることを、「記号接地」が悪いという。
例えば、「千円弱」という言葉は、若者の3割が誤解していると言われている。
千円弱は本来の意味としては「千円に届かない金額」なのだが、若い人の3割は「千円よりも少し多い金額」と理解していたのである。
さらに、「千円強」という言葉もまた、若者の3割が誤解していて、本来の意味は「千円と少し余りある金額」なのですが、若い人の3割が「2000円に近い金額」を挙げることがある。
このような状況をどのように理解したら良いのかは、まず「千円弱」「千円強」と言う言葉を使う経験が減っているということであろう。
スマホ決済、カード決済では、「千円弱」とか「千円強」などと言葉で表現する必要性はないはずである。
それに加えて、既知の言葉から解釈するのであれば「千円弱」は「千円プラス少額のお金」のことであり1100円程度となるだろう。
「千円強」は「千円プラス少し多めの額のお金」のことを示し1900円程度になるだろう。
こうした理解は、従来の理解をしている人からするとギョッとするかもしれないが、これは、経験がなく、言葉だけを手掛かりとして理解した「彼らなりの理屈」なのである。
この「彼らなりの理屈」がある程度、理にかかなった理屈であれば良いのであろうが。
ネット発信力がある若年層がこうした「彼らなりの理屈」に基づいた「言葉の解釈」を具体的な使用例と共に発信すると、あっという間に定着する可能性が高い。
国語辞典編集者としては、用例採取がますます忙しくなりそうな予感がする。
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