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実は国語は、『ことばの力』をつける教科ではなかった?!

実は国語は、『ことばの力』をつける教科ではなかった?!

国語は『日本人』らしさを育てる教科だった?!

中部大学教授 CUBE特別顧問

深谷圭助先生

 

日本の近代教育制度は、1872(明治5)年に「邑(むら)に不学の戸(こ)」なし」と、すべての家の子供が学校(小学校)に通うことをめざした「学制」が発布されて以降です。

その28年後、1900(明治33)年に「国語」と言う教科が誕生します。

この時代は、1889年の「大日本帝国憲法」発布、1890(明治23)年の「教育勅語」、1894年の日清戦争、1904年の日露戦争という、近代国家としての発展の過程にある時代でした。

とくに、この時代は「富国強兵」の時代で、産業を興し、軍隊を強くすることを目標にしていました。

そのために重視されたのは「国語」でした。

イギリスで産業革命のときに「学校」が始まったように、工場で働く人には「読み書き計算」ができることが必要でした。

とくに、工場で働く人は、言葉(文字や文章)で指示されたことを理解できることはとても大切だと考えられていました。

日本でも、イギリスの産業革命と同じ時代、18世紀から19世紀にかけて、寺子屋と呼ばれる塾(学校ではない)がたくさん作られ、「読み書き計算」が教えられていました。

これもまた、経済活動が活発になるに従い、庶民でも簡単な手紙を読んだり書いたりすることや簡単な計算ができることが求められました。

明治に入ると、日本の小学校では何を教材に日本語を教えてよいのか分かりませんでした。

教員も様々な職業出身者がいて、小学校の教材として「祝詞(神社で神主さんが唱える言葉)」を用いる人がいる有様だったと言います。

日本語を正しく教えるこということについて、当時はまだ日本語を言語学が学問領域として位置づけておらず、どのような内容をどのような順序で教えたらよいのか明らかではありませんでした。

しかしながら、日本の国語教育の目的は意外なところから提案されるようになったのです。

明治時代の日本の軍隊では日本語の指示や命令を正しく伝えることができる能力が重視されました。

当時は、まだ、日本人は地方によって異なる言葉を話していて統一された日本語を日本中の人々が使えるようになっていなかったのです。

1900(明治33)年の「国語」は、すべての日本人が共通の日本語を使えるようにすることを目標として成立しました。

そして、同じ日本人として、同じ日本語を使えるようにすることだけではく、同じものを美しいといい、同じことを正しいといえる感性と価値観(判断力)をもつことをめざしました。

実は、現在においても、国語の教科書には、「日本人らしい」ものの考え方やものの感じ方を育てる教材が集められています。

野生動物(自然)との共生という考え方を育てる「ごんぎつね」「大造じいさんとがん」「海のいのち」、戦争を繰り返さない平和を守ろうとする態度を育てる「ちいちゃんのかげおくり」など、国語の教科書の教材は、日本人らしさを育てるために用意されています。

その一方で、国語は、言葉の教育という側面においては、まだ未成熟です。

通常なら、言語の教育は、語彙(言葉、単語)を覚えて、文法を理解して、正しい文法のもとで文章を書くことを教えられるはずですが、国語の文章指導では、語彙指導や文法指導は十分でないまま、話し言葉をそのままに「自由作文」を書かせようとします。

文法的な厳密性や言葉の使い方の正しさはあまり厳密に問わず、たくさん文章が書ければよいとみなされます。

実は、これまでの国語教育では、こうした言語指導として真っ当な指導が行われていませんでした。

だから、国語の力をつけるにはどうしたらよいのかという子どもの問いに、だれも答えられなかったのです。

算数のテスト勉強の仕方や英語のテスト勉強の仕方はわかっていても、国語のテスト勉強の仕方は誰も知らないし、テスト勉強で国語にあてる勉強時間は格段に少なかったはずです。

実は、ここが日本の国語教育の大きな問題点なのです。

国語の成績をよくするためのポイントは、実は英語の成績をよくするのと同じです。

つまり、正確に言葉の理解をして、なるべくたくさんの言葉を使えるようにすること、そして、日本語の文法をよく理解し、分かりやすい構造的な文章を書いたり、文章を理解する力をつたりすることなのです。


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