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漢字の学習
中部大学教授 CUBE特別顧問
深谷圭助先生
■字形ととめ・はね・はらいの問題
小学校二年生で習う、教育漢字(学年配当漢字表)に「海」という漢字がある。「海」という漢字は、子供たちにとっては難しい漢字である。
まず、「海」の部首の「さんずい」についてである。
三画目は、「はねる」のか、「はねない」のかという問題である。
私が観察した授業で、教師が「さんずい」の三画目を「はねた」。
明朝体などの字体では「さんずい」の三画目は「はねている」のである。
それを見た子供たちは「はねちゃだめ」という。
それは、漢字ドリルの「さんずい」の三画目は「はねていない」からである。
教師は、子供の指摘に従い、「さんずい」の三画目を訂正し、はねたものから、はねないものにした。
実際、さんずいの三画目は「はねてもはねなくてもよい」のである。
なぜ、どちらでもよいと教えないのだろうか。
「とめ」、「はね」、「はらい」については、実はかな「許容」されている。
その許容の範囲については、文化庁によって指導の指針が示されている。
ところが、漢字指導の最前線にある小学校の先生でも、この指導指針を知らないのである。
小学校の先生も、子供もその依って立つ指針は、「漢字ドリル」の字体、字形なのである。
本来、漢字の字体や字形によって漢字のとめ、はね、はらいの様子は異なる。
漢字ドリルによっても違うし、書物やポスター、メディアによっても漢字のデザインは違う。
手書きの文字を書くとき、こうした些細なとめ、はね、はらいになぜここまでこだわって細かな指導をし、評価をしなければならないのだろうか。
それは、○がつくか×がつくのかにより、子供の成績、子供の評価、更に言うなら、子供の将来に影響があると思われているからだろう。
教員によって、漢字の指導能力は異なる。
だから、教師も保護者も、頼りにするのは、漢字ドリルのまま書くということになるのである。
■新字体「海」と旧字体「海」
小学二年生の新出漢字に「海」があある。
この「海」の「つくり」は「毎」となっている。
しかし、元々は、海のつくりの中は「母」であり、実は海の作りの中が「母」となっている漢字「海」は、「人名用漢字表」に残されているのである。
「海」は、もともと、「海」であったという事実は、誰も教えない。
地球上の生命の母たる「うみ」の中には、「母」という字が組み込まれていたのである。
かつては「海」であったのに、1947年に旧字体は新字体に改められてしまった。
この事実もしらずに、小学校の先生は「海」と書いたら、×をつけ、「海」と書けるまで、×をうち続けるのである。
漢字指導においては、漢字ドリルの字体、字形通りに書けたらよしとし、漢字という「へん」や「旁」を組み合わせた「表意文字」としての漢字がもつ特異性触れるような指導を行うことができる教師は少ない。
戦後、旧字体を新字体に変えたことで、漢字のもつ有意味性の多くは失われてしまった。
しかし、「海」に関しては、旧字体の「海」が「人名用漢字表」に残されているのである。
子供が「海」と書いた時、この新しい漢字と古い漢字についての話をするだけでも興味深い話ができるのではないか。
例えば、「笑」の部首は「たけかんむり」である。
なぜ、「笑」の部首は「たけかんむり」なのだろうか。
元々、「笑」という漢字は「たけかんむり」ではなく、巫女が両手をかざした形をたまたま竹の形に字形化されたものだという。(白川静『新訂字統」平凡社、四五六ページ)
漢字の字源は長い歴史の中で様々なルーツを辿っており、一概には説明できないのだが、「読める」「書ける」の他にも、語源について調べたり、考えたりすること大切なことである。
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