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カタカナ語について
中部大学教授 CUBE特別顧問
深谷圭助先生
かつて日本が近代化を推し進めようとした明治時代、ヨーロッパの思想や考え方を取り入れようとした時、どのような日本語に置き換えたら良いのかが大きな問題になりました。
その時、活躍したのが福沢諭吉や西周です。
彼らは外国語を苦労して習得し、江戸幕府や明治新政府において、啓蒙思想家として活躍をします。
その時に、ヨーロッパの考え方や思想を日本に紹介しました。
例えば、福沢諭吉は「演説」と言う言葉を作り出しました。
「演説」や「西洋」、そして、「自由」などは今の社会に定着しています。
その功績は、時代を画した偉業と言えるでしょう。
「『演説』というのは、英語で『スピーチ(speech)』といって、大勢の人を集めて説を述べ、席上にて自分の思うところを人に伝える方法である。わが国では、昔からそのような方法があることを聞かない。
寺院の説法が、まあ、これに近いだろうか」
このように、明治時代に、大ベストセラーになった『学問のすすめ』で福沢諭吉は「演説」を定義しています。
「演説」という日本語そのものは、古くからありました。
しかし、諭吉が”speech”の訳語として「復活」させたのです。
その後、諭吉が慶應義塾に「演説館」を造ったり、スピーチの重要性を再三、訴えたため、諭吉が創り出した言葉として定着しました。
それから150年が経ち、欧米の新しい概念を表す言葉が日本で紹介させるとき、カタカナ語としてそのまま使われることが多くなったような気がします。
たとえば、アクティブラーニングという言葉は、かつてなら、「活動的学習」と翻訳したのでしょうが、カタカナ語でその言葉の音を残した方がよいと考える人が増えているのでしょう。
日本語は漢字を用いるので、概念を表す言葉を作り出すことが得意な言語なのですが、カタカナ語でそのまま用いる傾向が顕著になってきています。
新しい言葉の多くは、外来語をカタカナ語としての日本語に組み込む傾向があります。
もっとも、カタカナ語は日本語ですから、日本語の音で作られています。
外国語の音とは異なるので、外国語由来ではありますが、日本語の音として、また、日本語独自の意味の言葉として用いられます。
カタカナ語は、あくまでも日本語です。
正確に外国語を反映した発音でもないし、意味でもないのです。
日本語の中に組み込まれた時点で外国語の文脈から切り離されるからです。
カタカナ語をよく使う人は、いわゆる「業界人」が多いのですが、彼らの「隠語」として、彼らの間でしか通用しなかった言葉がインターネットやSNSの普及によって、一般に知られるようになった言葉があります。
この種の言葉は、一見、外来語のように見えるのですが、全くの造語であることがありますから注意が必要です。
カタカナ語は近年とても増えています。『カタカナ語大百科』(成美堂出版)という本を監修しました。
2023年7月に刊行されましたので、是非手にとって読んでみてください。
いかに私たちが、カタカナ語を日常の中で使っているかを改めて実感することができるのではないかと思います。
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