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「死語」となった「ラッパ飲み」という言葉
中部大学教授 CUBE特別顧問
深谷圭助先生
昭和の時代、会議室には、多くの湯飲みと急須が置かれていました。
会議になると、女性がお茶くみをしていました。
昭和の終わりごろ、ペットボトルのお茶が出現しました。
当時、お茶は茶葉を買って、家庭や会社でお湯を沸かして入れるもので、ペットボトルにお茶を入れてもだれも買わないと思っていました。
ところが、コンビニエンスストアの普及で、ペットボトルのお茶は、清涼飲料水の中で最も売れるジャンルの商品となりました。
女性がしていた「お茶くみ」はいつの間にか姿を消し、急須や湯飲みが会議室から消えました。
会議ではペットボトルのお茶が用意されるようになりました。
女性がお茶くみから解放されたと当時はよく言われたものです。
今でも、ペットボトルのお茶と共に紙コップが一緒に用意されることがあります。
これは、ペットボトルのお茶をそのまま「ラッパ飲み」することに対する忌避が原因と考えられます。
お茶を飲む際、湯飲みなどの器に入れて飲むのがマナーと言われていた時代の名残なのでしょう。
ペットボトル飲料が発売されたのは、1980年2月のことです。
食品衛生法に基づく容器舗装の規格基準の改正で、ペットボトルを用いた炭酸飲料や果実飲料などの清涼飲料水の製造販売が始まりました。
1リットル未満の小型サイズのペットボトルは、散乱ごみに対する懸念から業界では使用を自粛していましたが、リサイクルの取り組みが本格化した1996年、消費者にニーズに応えて、500ミリリットルサイズのペットボトルが導入されるようになりました。
この500ミリリットルのペットボトルの普及が、ラッパ飲みを加速させました。
それまでは、アルミ缶やスティール缶がリサイクルの中心でした。
これらの飲料水を飲む際は、飲み口の形状から「ラッパ飲み」とすることが困難でしたが、小型ペットボトルの普及で、一気に「ラッパ飲み」がポピュラーになりました。
若い人は、ラッパ飲みが「行儀が悪い」という認識もなく、人前でも平気にペットボトルの「ラッパ飲み」をするようになりました。
ペットボトル飲料をそのまま直接口にして飲むことが定着し、その結果として、「ラッパ飲み」は特にとがめられることがなくなりました。
こうして、「ラッパ飲み」という言葉そのものが死語となることになりました。
言葉は広く使われることで定着しますが、その言葉が使われる場が失われることで、急速に死語となります。
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